東京地方裁判所 昭和46年(借チ)1069号 決定
〔主文〕1 申立人が、別紙目録(二)記載の建物を取り毀し、同目録(一)記載の土地上に同目録(三)記載の建物を建築することを許可する。ただし、敷地との配置関係は別紙図面のとおりとする。
2 別紙目録(一)記載の土地に関する申立人相手方間の賃貸借契約の賃料を本裁判確定の日の属する月の翌月分から一ケ月一三六〇円に改める。
3 申立人は、相手方に対し、金一四万円の支払をせよ。
〔理由〕(申立の要旨)
1 申立人は、相手方の父柳田吉之助から昭和二三年七月頃別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という)を非堅固建物所有の目的で期間を定めずに賃借した。その後、相手方は申立人の承諾の下に柳田吉之助から賃貸人の地位を承継した。賃料は、昭和四三年一〇月一日から一ケ月八五〇円に改められ、現在にいたつている。
2 申立人は、本件土地上に所有する別紙目録(二)記載の建物(以下本件建物という)を主文第一項掲記のように改築すべく計画し、本件賃貸借契約上増改築につき賃貸人の承諾を要する旨の特約が付されているか否か不明であるので、相手方に右改築の承諾を求めたところ、拒絶されたので、賃貸人の承諾に代る許可の裁判を求める。
(決定理由)
1 本件の資料によると、申立の要旨として揚げた前記1・2の事実のほか、本件改築は土地の通常の利用上相当であると認められる。相手方は、本件改築により、本件土地の北側に隣接する相手方の居宅の日照が奪われるので、本件申立は許容すべきでないと主張する。平家建の家屋を二階建に改築するのであるから、北側に隣接する相手方の居宅が従前より日照を阻害されるのは明らかであるが、本件改築は建築基準法上適法であり、申立人は、北側境界から1.2米離して建築するなど相手方の日照についてはそれなりの考慮を払つているのであり、相手方の日照を故意に妨害する意図でないことは明らかであり、大都市における宅地の需要に対し、供給が甚だしく少い現状において、土地を合理的に利用するのは必然の勢いであり、本件の如き木造二階建の建築により日照が阻害されても、それは相手方として社会通念上受忍すべきであり、殊に相手方の日照阻害の大きな原因の一つは、相手方の居宅が本件土地の北側境界に極めて接近して建てられていることによるのであるから、相手方の右主張は許さるべくもない。また、相手方は、弟二人がやがて結婚するので、その住居確保のため、期間満了の際更新拒絶する予定であるというが、申立人の借地権を消滅させるほどの事由とは認められない。
以上のように、本件改築は土地の通常の利用上相当であり、申立の排斥を求める相手方の主張はいずれも理由がないので、本件申立は、これを許容すべきである。
2 本件改築により、住の快適性及び潜在的収益(帰属家賃)は増加するので、申立人に対し、相手方に対する財産上の給付を命ずるのが相当であり、その額は、従来の裁判例に徴し、鑑定委員会の評価になる本件土地の更地価格四六五万円の約三%に当る一四万円とし、賃料を、同委員会の意見に従い、本裁判確定の日の属する月の翌月分から一ケ月一三六〇円に改める。 (小山俊彦)
目録
(一) 東京都中野区南台四丁目七一番二、同番一〇に跨る
宅地 56.19平方米(私道部分7.18平方米を含む)
(二) 右地上所在
家屋番号二一番一九
木造板葺平家建居宅
床面積 一九平方米(現況36.36平方米)
(三) 木造二階建居宅
床面積 一階 29.88平方米
二階 25.92平方米
(平面図略)